SDGs INTERVIEW

「できることからコツコツと」食を通じて「おいしさ」と「健康」を届ける
INTERVIEW #15

「できることからコツコツと」食を通じて「おいしさ」と「健康」を届ける

株式会社ピエトロ SDGs推進室室長
長坂沙知子さん

「野菜嫌いがなおる魔法のドレッシング」と呼ばれ親しまれるドレッシングの製造・販売を行う食品メーカーの「ピエトロ」。全国にレストランおよび直販店も展開しています。
今回、SDGs推進室室長の長坂沙知子さんに、SDGsへの取り組みについてお話を聞きました。「ピエトロらしさ」を大切にしながら多岐にわたって活動する事業をご紹介します。

プロフィール

長坂沙知子

大学卒業後、2009年に入社し、現在15年目を迎える。入社後はメニューや商品パッケージのデザインを担当し、その後、海外事業課との兼務として学生時代に学んだ英語を活かして活躍。現在はSDGs推進室と海外事業課に所属する。

まずは、御社の事業内容を教えてください。
弊社は、全国のパスタレストランや直販店の経営をしながら、ドレッシングやパスタソースなどの製造・販売を行っています。店舗事業と商品事業、いずれも主力事業として展開しています。

ピエトロのはじまりは1980年、福岡市の繁華街・天神にオープンした小さなスパゲティレストランです。当時は珍しかった、明太子や高菜、納豆などの食材を取り入れ、和と伊を融合させたメニューを提供していました。この店では、茹でたてのスパゲティを召し上がっていただくために、茹で時間をお客様にお待ちいただく間、前菜代わりにサラダを提供していました。このサラダにかけていたドレッシングが評判となり、「分けてほしい」とのお声に応えたことがきっかけで、ドレッシングの販売が始まりました。

現在は、創業当時からの定番商品「ピエトロドレッシング 和風しょうゆ」をはじめ、パスタソースやスープ、冷凍商品など幅広く商品を販売しています。レストランや直販店は、全国に46店舗(2024年12月時点)展開しています。
御社がSDGsに取り組むことになった、きっかけや背景を教えてください。
弊社では、以前から食育活動や地域活性化への取り組みは行っていましたが、SDGsの目標が採択されたことを機に、さらに会社として力を入れて取り組むことにいたしました。創業以来、私たちの想いは、食を通じて世界中の人々に「おいしさと笑顔を届けたい」というもので、それが食育活動をはじめ、環境問題や地域社会への貢献にもつながっています。SDGsにおいては、社会との向き合い方を考え、「4つの活動指針」を掲げて「ピエトロらしいSDGs」に取り組んでいます。

「ピエトロらしさ」とは、具体的にはどのような考えでしょうか?「4つの活動方針」と併せて教えてください。
「ピエトロらしさ」とは、私たちが掲げるテーマ「しあわせ、つながる」に基づき、お客様、社会、働く私たちがしあわせでありながら、持続可能な社会の実現を目指すことだと考えています。私たちの会社の規模的にもできることは限られていますが、大切にしているのは「できることからコツコツと」という考えです。例え小さなことであっても、継続して積み重ねていくことを大切にしています。

SDGsには17の目標がありますが、「食に関する企業としてどう貢献できるか?」と考えた時にこの「4つの活動指針」が生まれました。

1. こどもたちのイマとミライにhappyを-食育-
2. 地球の健康に貢献-環境-
3. 社会のしあわせ-地域・社会-
4. 働く私たちのしあわせ-働きがい-

これらの活動指針をもとに、ピエトロらしいSDGsの実現を目指し取り組んでいます。

それぞれの活動指針について詳しくご紹介ください。まずは、「食育」というキーワードを元に掲げる1つ目の指針について、その想いと具体的な活動を教えてください。
ピエトロのドレッシングは、創業当時レストランで頂いた「このドレッシングだと野菜嫌いの家族もサラダを食べるので分けてほしい」というお声から商品化し、“野菜嫌いがなおる魔法のドレッシング”として、長年多くのお客様にご愛顧いただいています。こうしたことから食育活動にも力を入れていて、「こどもたちのイマとミライにhappyを」というテーマのもと、未来を担う子どもたちに健康的な食習慣を育んでもらうための活動を行っています。

具体的な活動としては、2014年から取り組んでいる「幼稚園・保育園キャラバン」があり、今年度は13園を訪問する予定です。クイズや紙芝居、講話などを通じて野菜について楽しく学び、ピエトロドレッシングで野菜をおいしく食べることで、食への関心と感謝の気持ちを深めてもらっています。

また、全国のピエトロレストランでは、キッズ料理教室も開催しています。ピエトロシェフ指導のもと、子どもたちがコックになってサラダやピザを作り、ご家族に振る舞う体験をしてもらっています。

未来を担う子どもたちに、食育を通じて「happy」を届けることが、私たちの大きな目標です。「日本一おもしろい料理教室」を開くなど、さまざまな形で今後も子どもたちに食の楽しさと大切さを伝え、しあわせを届けられるように活動していきたいです。

「環境」をキーワードにした活動方針について教えてください。
ピエトロでは、製造工場やレストラン店舗での資源ごみ削減に努め、環境に配慮した生産や営業活動を行っています。企業活動は時代の背景に沿ったものであるべきだと考え、その時々の課題に対して解決策を見出していきたいと思っています。「地球の健康」があってこそ、私たちの活動が成り立つという認識のもと、地球が本当に喜ぶことは何か、食品メーカーとしてできることを模索しながら、自然に優しい取り組みを続けています。

まず、パッケージにバイオマス素材を使用するなど、脱プラスチックに注力しています。環境に配慮した素材を積極的に採用し、環境負荷を減らすことに取り組んでいます。

また、「ラベルtoラベル」という取り組みも行っています。これは、使用済みのラベルから印刷されたデザインを取り除き、新しいラベルに再生する技術です。これによって、資源の循環と温室効果ガスの削減に貢献しています。現在、ピエトロの看板商品のドレッシング2品に「ラベルtoラベル」のパッケージラベルを導入し、店舗で使用済みラベルを回収しています。

さらに、2025年を目標に、 自社施設での使用電力において「再生可能エネルギー化100%」を目指し、順次取り組んでいます。ピエトロレストランの郊外型店舗全店は再生可能エネルギーを利用しており、社屋にソーラーパネルも設置しています。

このほかにも、ピエトロレストランで地元九州の竹からつくられた「竹箸」の導入や、社員の名刺に石灰石を原料とする素材「LIMEX(ライメックス)」の採用もしています。「LIMEX」は名刺100枚を作ることで約10Lの水を守ることができます。これらの一つ一つの取り組みを通じて、環境への負荷を減らせるよう積み重ねています。

地域社会との連携や貢献について、どのような活動を行っていますか?
福岡生まれのピエトロは、現在も本社を福岡市に構え、地域の皆様に支えられている企業です。そのため、地域活動には積極的に取り組んでおり、感謝の気持ちを形にしています。地域活性化によって地域全体のしあわせを実現することが重要だと考え、地元福岡への恩返しを続けています。

例えば、福岡を本拠地とする「福岡ソフトバンクホークス」や「アビスパ福岡」といった地元のプロスポーツチームの支援活動をしています。これらのチームは地域の誇りでもありますが、地域全体が一丸となって応援することで、さらに多くの人々が集まり、地域が盛り上がる力の元だと信じています。

また、地域の子どもたちや困っている方々への食糧支援にも力を入れています。地域の福祉に貢献することも、ピエトロの大切な使命の一つです。さらに、レストラン・自社工場周辺の清掃や自社工場付近の海岸清掃など、地域の方々と協力して地球の環境保全に努めています。

「働きがい」をキーワードにした、働く環境の向上に関する事業について教えてください。
弊社の創業者・村田邦彦の「仕事も遊びも一生懸命」という言葉に基づき、楽しく仕事に取り組める職場環境の整備を進めています。社員同士のコミュニケーションを大切に、異なる部署の社員とも自由に交流できるように「フリーアドレス」を採用して、定期的にオフィスのレイアウト変更をしています。社員が「働き続けたい」と思える会社であるよう常に目指しています。

また、自由に挑戦できる環境を作ることも社員のやりがいにつながると考えています。
役職や年齢を問わず、社内でアイディアを募集する「アイディアコンテスト」を定期的に開催し、選ばれた魅力的なアイディアは、構想にとどまらず実現させます。例えば、24時間いつでもピエトロ商品を購入できる自動販売機の設置も、このコンテンストがきっかけで生まれました。

また、社員の家族のしあわせも私たちのしあわせとして、社員の家族も参加できるイベントを開催しています。具体的には、自社農場で一緒に野菜の収穫体験や食事をする「ファミリー収穫祭」や、子どもが親の職場見学や業務の体験をする「子どもお仕事参観デー」などです。

社員一人一人が活躍できる場でありながら、時代の変化に合わせてアップデートし続ける会社を目指しています。
SDGsの実現へ向けた活動を進める中で、課題と感じることはありますか?
弊社のSDGs推進室は2人だけの小さな部署のため、できることには限りがあります。しかし、会社全体としては、複数の部署から集まる社内横断型のプロジェクトの一つに「SDGsプロジェクト」があり、そのメンバーと一緒にピエトロ全社での活動も進めています。
SDGs推進室の部署だけでなく、社員全体でSDGsに取り組む姿勢を持ち、今後もピエトロとして活動を広げていきたいです。
最後に、今後のSDGsへの取り組みについての展望を教えてください。
すべてのステークホルダーと未来を担う子どもたちのために、一歩ずつでも着実に取り組みを進めるのが私たちの役割です。ピエトロはこの会社規模だからこそ「お客様と直接つながる」ことができます。店舗と商品の両方を持つ私たちの強みを活かしながら、つながりを大切にして、より「ピエトロらしい」SDGsへの取り組みを今後も推進していきたいと考えています。
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