SDGs INTERVIEW

「SDGsビジネスの開発」に向けて!温暖化による暑さの悩みを解決する遮熱の総合コーディネイト「遮熱ミックス」の実現|丸源竹内組の取り組み
INTERVIEW #14

「SDGsビジネスの開発」に向けて!温暖化による暑さの悩みを解決する遮熱の総合コーディネイト「遮熱ミックス」の実現|丸源竹内組の取り組み

株式会社丸源竹内組
代表取締役 竹内隆介さん

夏場における猛暑が収まらない静岡県。建設会社「丸源竹内組」は、「暑さを何とかして!」というクライアントの要望に応えるため、窓ガラスや天窓に塗布することで室内の明るさを保持しながら室温を下げる遮熱塗料を開発しました。温暖化をビジネスに結びつけた独自技術の開発に至るまでのストーリーや、今後の展望についてお話を聞きました。

プロフィール

竹内隆介

静岡県浜松市出身。大分県の日本文理大学工学部建築科卒。家業である丸源竹内組に入社後は、既存の建築会社の枠にとらわれない挑戦を続け、気候変動をビジネスに結びつけるための活動に取り組む。小学校から大学まで13年間剣道に従事し有段者でもある。座右の銘は「文武両道」。

御社の事業内容について教えてください。
当社は、建設現場で求められるお客様の様々なご要望に、ワンストップでお応えする総合建設会社です。今回メインでお話する「遮熱工事」(SDGsビジネス)に加えて、新築工事やリフォーム、耐震工事、土木工事、さらには発電工事まで、建設に関わる幅広い業務を手掛けています。

全ての仕事は、当社が創業から90年以上に渡り培ってきた専門知識と経験に基づいています。お客様のお悩みや課題を丁寧に引き出し、迅速に対応することが私たちのスタイルです。営業や設計、施工管理、そして完成までの一連のプロセスを自社で一貫して行い、スムーズな課題解決を目指しています。

お客様との信頼関係を大切にしながら、全体最適を図り、お客様の「永続的」発展をサポートしています。
SDGsに関する事業として今回は「遮熱」についてお伺いします。まず、「遮熱工事」とはどのようなものか教えてください。
遮熱工事は、工場や事務所などの建物内で、暑さを防ぐための工事です。ご存じのとおり、温暖化の影響により「暑さ」は年々深刻化しています。そんな中で、太陽光が当たりやすい窓や壁、屋根といった箇所に遮熱工事を施すことで、熱を反射させ、室温の上昇を抑えることができます。

一般的に室内の暑さ対策としては、エアコンなどの空調設備が用いられていますが、遮熱工事では、熱の直接の原因である窓や壁、屋根に対して施工を行うことが特徴です。つまり、熱を建物内部に入れないという根本的な対策を行うわけです。

当社では、「遮熱」という言葉がまだほとんど知られていなかった20年以上前から、この分野に着目し、研究と模索を重ねながら取り組んできました。

御社が展開する独自サービス「遮熱ミックス」とは、どのようなものかご紹介ください。
「遮熱ミックス」は、工場や事務所、店舗などを対象とした総合的な遮熱コンサルティングサービスです。「遮熱ミックス」の施工は、今までの天井や壁などの断熱とは違い、遮熱工事、屋根、壁一箇所だけの施工で完結せず、窓・天窓・外壁・屋根・アスファルトまで、すべてをカバーして施工する工法です。

お客様ごとに建物の規模や立地、構造などが異なるため、窓の数や広さ、建物の面積や体積、天井の高さもそれぞれ違います。当社では、どのような状況にも対応できる「遮熱のオーダーメイド」として、そのお客様に最適な遮熱対策を総合的に提案しています。

窓ガラスの施工には、当社が独自に開発した塗料「Win Armor 03(ウィンアーマー03)」を使用しています。これにより、紫外線を99.9%カット、赤外線を90%以上カット、可視光線をコントロールすることにより、室内の温度上昇を防ぎ、直射日光による暑さや眩しさも軽減します。
また、壁面や天井の遮熱対策には、不燃認定品の遮熱シートを用いて、輻射熱をシャットアウトします。屋根やアスファルトには、太陽光を反射・放射する特殊な塗料を塗布することで、屋根裏側の温度を約5℃以上下げ、全体で約15%~40%の節電効果とエアコンの効きを実現します。

多くの会社が「屋根だけ」「壁だけ」の施工を行いますが、当社は建設会社として、全体を見据えた総合的な遮熱対策を提案できることを強みとしています。
御社が独自技術を持つ「窓の遮熱」において、得られるメリットを教えてください。
窓から入ってくる熱は、室内の温度上昇の73%以上を占めています。窓に遮熱塗料を塗ることで、窓自体に暑さや寒さを遮断する膜を作ることができます。実際に窓ガラスにこの塗料を塗ると、乳白色のコーティング状態になり、塗らない場合と比べて、窓際の温度は約13℃下がり、室内全体の温度は約5℃以上下がります。

これにより、工場や事務所などの作業環境が大きく改善されます。特に夏場の工場では、窓際の温度が45℃を超えることもありますが、この特殊な塗料を塗ることで、13℃下げることが可能です。(令和6年7月現在)その結果、従業員がより快適に作業できる環境をつくることができます。

さらに、遮熱塗料を使用することで、エアコンに頼りすぎることなく暑さ対策ができるため、電気代の削減にもつながります。エネルギーコストの削減は、企業にとって大きなメリットであり、同時に環境への負荷軽減にも貢献します。

「遮熱ミックス」は、コーポレートサイトにて動画でもご紹介しています。
御社独自の遮熱塗料「Win Armor 03(ウィンアーマー03)」の開発に至るまでのストーリーをお聞かせください。
私は、建設業の枠にとどまらず、常に新しい挑戦をしなければならないという思いを抱いていました。開発のきっかけは、お客様からの「工場や事務所の室内の暑さをどうにかしてほしい」という声でした。

当初、解決策として既存の製品を探しましたが、適したものは見つからず、「なければ自分たちで作るしかない!」という思いから開発をスタートしました。今から20年前に、ここまで気候変動して暑くなることを想像していた人は少なかったはずです。「猛暑」や「熱中症」という言葉を頻繁に耳にするようになったのも、最近になってからだと感じます。時代のニーズに応じたこの商品は、お客様の悩みを解決したいという思いが重なって生まれたのです。

開発当初から、私たちには明確なビジョンがありました。それは「中途半端なものではダメ」ということ。極端に効果が見られる遮熱塗料を作ろうと決めていたのです。そして、既存の製品では対応できない「ガラスに塗れる」「網入りガラスに対応する」「樹脂パネルに対応する」といった条件を満たすものを目指しました。

開発は半年、そこから改善を繰り返し6年の歳月をかけ、2018年に遮熱塗料「Win Armor 03」を発売しました。商品名には「鎧のように強い塗料で暑さに打ち勝つ」という意味を込めています。学生時代に剣道に打ち込んでいたので「鎧」という言葉を使い、また私が丸源竹内組の3代目に当たるため「03」という数字を加えました。

この商品は、まずは地元から徐々に広がり、地域の事業主の協力も得ながら成長しています。今後もSDGsやカーボンニュートラルという課題に向き合い、これからも進化を続けていきます。
開発において苦労したエピソードを教えてください。
初期段階では、工場内で作った塗料が、屋外では期待していた仕上がりを発揮しないことがありました。試作を繰り返し、濃度や成分の配合を調整しながら、理想の形に近づけました。

また、「遮熱」という概念自体が当時まだ世間に浸透していなかったため、その必要性を理解してもらうことが大変でした。体感してもらうだけでなく、効果を数値で示し、温度差をグラフで表し、温度上昇率の違いを測定できるアプリも自社で開発しました。実際の数値を持って効果を説明することで、信頼を得ることができました。

「遮熱ミックス」という新しいサービスを事業化できた事に対して、羨ましがられることもありますが、私はこの分野においてまだ「入口」に過ぎないと感じています。世の中は常に変化し、新たなニーズが生まれます。その変化に順応しながら、次の挑戦を続けていかなければならないと考えています。
「遮熱ミックス」は、現在も改良を重ねているとお伺いしました。
はい。「遮熱ミックス」は、常に他社との差別化を図り、進化させています。例えば、開発当初は塗装前後で8℃の温度差がありましたが、改良を重ねることで、現在は13℃の温度差を実現しています。

また、今後の改良として「透明な塗料」の開発を進めています。現在の塗料は色がついていて視認性を遮ってしまうため、それを解消する透明な塗料を目指しています。これが完成すれば、車の窓ガラスなどのあらゆる場所で使できるようになるでしょう。真夏に車に乗り込んだ時の暑さがなければ最高ですよね!私たちはそんな未来を目指しています。

さらに、施工時によって発生してしまったであろうCO2の一部をオフセット(削減)されたことを証明する「カーボンオフセット証明書」も発行し、額縁に入れてお客様に進呈しています。この額縁は、地元の浜松市の就労支援施設「作業所せきれい」で制作してもらっています。この取り組みは、地元の金融機関「浜松磐田信用金庫」による、SDGs推進におけるビジネスマッチングの成果として、2020年度に「環境大臣賞」を受賞しました。

2022年には、環境省による「第10回グッドライフアワード SDGsビジネス賞」を「遮熱ミックス」が受賞しました。

サービスに付加価値を与え進化させることで、まず地元に浸透し、その後メディアにとりあげられるようになり、全国展開への足がかりとしてきました。
独自技術を開発することは決して簡単なことではないと思います。それを実現できた理由を振り返り、今どのように考えていますか。
私たちが独自技術を実現できたのは、まず「自社で施工できる」という基盤があったからです。当社は建設会社として、現場を熟知しています。塗料というものは、ただ開発されただけでは意味がなく、実際に塗って施工することが必要です。開発者だけの考えで完璧な製品は生まれません。現場の意見を吸い上げ、それを反映させることで初めて完成します。自社で塗装できる体制があること、それこそが当社の強みです。

また、さまざまな建材からヒントを得て、積み重ねてきたことも大きな要素です。それに加え、創業から90年以上にわたる歴史の中で培ってきた人脈、ノウハウ、知識を融合させた結果、今の技術が生まれました。

さらに、私自身が経営者として常に「勉強」を続けてきたことも理由の一つだと考えています。経営学の理念や哲学、世の中の常識や事例などを常に学び続けてきました。「自社の利益を追求するだけでなく、大義を持って取り組む」という考え方も、その過程で学んだことの一つです。もし学びがなければ、壁にぶつかった時に間違った方向に進んでしまったり、途中で諦めてしまったりしていたかもしれません。今の私たちがあるのは、その学びを信念に変え、迷いなく突き進んできたからだと確信しています。

最後に、今後の展望についてお聞かせください。
時代にあったニーズに柔軟に対応しながら、まずは長年支えてくれた地元への貢献を大切にしたいと考えています。そして、それを徐々に全国へ、さらには国際的に広げていきたいと思っています。

現在、私たちは2050年カーボンニュートラル実現までに、300万トンのCO2削減を目標にしています。これは、ある総合商社が掲げているものと同じ数値で、途方もない目標に聞こえるかもしれません。それでも、私たちは実現できるものだと信じています。ただ、そのためにはまず、多くの仲間が必要です。現在、当社のサービスに共感し、共に展開してくれる代理店が徐々に増えてきており、現在も募集を続けています。

CO2減は地球全体の課題でもあるため、インドネシアの展示会に出展するなど、海外にも積極的にアプローチしています。今後はさらにグローバルな展開を視野に入れ、国際的な取り組みとしていきたいです。

そのまた先の展望となりますが、「遮熱」をきっかけに、建設に関する「何か」を丸源竹内組として広げていきたいと考えています。その「何か」が、物であるのか、文化や考えなのかはまだはっきりしている訳ではありませんただ、人々が望むものに真摯に向き合い続ければ、おのずと見えてくると考えています。
今現在は「Win armor 03」のメリットデメリットを違う形にして表現・施工できないかと考えています。

私が入社した当時、会社は創業62年目を迎えたタイミングでした。当時、「創業100年」という目標は全く頭にありませんでしたが、今はもうその節目が目の前にあります。ただ、新しいことへ挑戦し続けない限り、この100年という大きな目標にはきっと到達できないでしょう。丸源竹内組を4代目、5代目、6代目…と続け、未来の世代へとつなげていく。そのために挑戦を続けることが、「持続可能な社会づくり」(SDGsビジネス)に貢献する私たちの姿です。
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