SDGs INTERVIEW

SDGsウォッシュで終わらせない、想いのこもったSDGs活動を企業に根付かせるポイント|TABLE FOR TWOの取り組み
INTERVIEW #06

SDGsウォッシュで終わらせない、想いのこもったSDGs活動を企業に根付かせるポイント|TABLE FOR TWOの取り組み

特定非営利活動法人TABLE FOR TWO International
事業開発 村田亜希子さん

全社一丸となってSDGsを進めたいと思っても、社員の理解を得ながらSDGs活動を継続するには、なかなかの労力がかかります。

そんなとき、社員が身近に参加できるSDGs活動があるとありがたいもの。さらに想いや実績のあるNPO法人とパートナーシップを組むことで、より意義あるSDGs活動に取り組めるようになります。

そこで今回は、優れたビジョンのつくり方と社員の巻き込み方について、特定非営利活動法人TABLE FOR TWO International(テーブル・フォー・ツー・インターナショナル、略称:TFT)で事業開発を担当する村田亜希子さんにお話を聞きます。

視野を広げれば解決できる社会課題がある
日本発のソーシャルビジネスとして、アフリカ・アジアの5カ国(ケニア、タンザニア、ルワンダ、ウガンダ、フィリピン)を中心に支援活動を行うTABLE FOR TWO。まずは、貴社の事業について教えていただけますか?
TABLE FOR TWOとは、直訳すると「2人のための食卓」になります。先進国と開発途上国における食の不均衡をなくし、世界中の人々が健康に生きていける世の中を実現すべく、2007年の設立より活動を続けています。
「2人のため」の「2人」とは、先進国と開発途上国の方々を指しているのですね。
はい。先進国側の日本では、肥満などの生活習慣病の予防に役立つようなヘルシーな食事メニュー(TFTメニュー)を提供しています。TFTメニューを1食とるごとに20円が寄付され、開発途上国の子どもたちへ1食分の給食が届きます。

出典:TABLE FOR TWOホームページ
実は世界中で、貧国の約8億人が飢餓や栄養失調で苦しむ一方、飽食の国では20億人近くが肥満や生活習慣病をかかえているんです。それぞれの課題を1つの食料問題として捉えることで、グローバルレベルでの問題解決を図っています。
目から鱗のビジネスモデルです。どうやってそのアイデアが生まれたのでしょう?
TABLE FOR TWOのコンセプトが生まれたのは、世界的なリーダーが集う世界経済フォーラム(ダボス会議)の場。あるテーブルは飢餓問題をディスカッションしている一方、別のテーブルでは肥満や生活習慣病について話し合われていたそうです。

同じ食の問題ならば、一緒に話し合うことで解決できるのではないか……とTFTの創設者は考えたとのこと。視野を広げることで解決への道筋が見つかる社会課題は多いのかもしれません。
日本でも食に関連した課題があるとは意外なコメントでした。
たしかに、豊かな食文化に恵まれている日本にいると、飢餓や栄養失調といった問題は身近に感じづらいですよね。ですが、栄養の課題は日本でも複雑化しているんです……。

たとえば、細身を求める若い女性が増えていますが、痩せすぎは低体重児が生まれやすいリスクにつながります(※)。

意識しないと気付きにくい栄養の課題だからこそ、自分の健康を考える機会を持ってほしい。日ごろからTABLE FOR TWOを利用することで、そのきっかけにしてもらえたらと願って活動しています。

※参考:令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要
支援される側だけでなく支援する側のメリットも
2007年の設立からこれまでに8,800万食以上の給食を支援先に届けてきたとお聞きしました(2022年5月末時点)。TFTがこれほど多くの支持を集めている理由は何でしょうか?
TABLE FOR TWOが共感を呼んでいる一番のポイントは、双方向的な仕組みにしたことだと感じています。一方的に寄付や支援をするのではなく、支援した側も健康というメリットが得られるので、参加しやすいと言っていただけます。

生活の中に取り込まれ、自然と取り組める形にできたのもポイントかもしれません。食事という日常的な行動を変えることなく、健康維持につながる行動ができるので高パフォーマンスです。

まとまった寄付金を用意せずとも始められるので、企業さまも導入しやすいと言ってくださいます。社食やお弁当にTFTメニューを組み込んでいただく形で、寄付の最少単価は20円です。
普段の食事をTFTメニューに置き換えるだけで20円の寄付ができるのは、とても取り組みやすいですね。
そのかわり、社員さんの理解がないと続けられない活動ではあると思います。TFTの支援先は、1日2ドル以下の世帯収入で暮らしているような子どもたち。支援側の企業さまにはTFTメニューを導入して満足するのではなく、世界で起きている食や健康の課題について知り、何とかしたいという気持ちを育んでいただくことが重要だと考えています。

TFTでは月次・年次の報告書を配信し、支援先と支援元の想いを繋ぐ 引用:TFT Monthly News 2022年6月号
給食があるから学校に行ける、お腹を満たすことから広がる将来性
設立から15年目を迎え、今では支援先にどんな変化が生まれていますか?
お陰さまでたくさんの成果が現れていて、たとえば2010年に支援を開始したルワンダのバンダ村では、大学に進学する子どもも現れはじめました。大学生になった子たちは、村ではヒーローです。彼ら・彼女らのようになるのが後輩たちの夢であって、みんな「給食があるから勉強を続けられる」と言います。

ザンジバルでの給食の様子 出典:TABLE FOR TWO
お腹がすいた状態では、勉強する気力も将来の夢を考える余裕も生まれませんよね。やはり、生きていく上でご飯を食べられることは何より大事だと感じます。
支援先の成果も見え、今後ますます支援の輪が広がっていきそうですね。
お陰さまで、TABLE FOR TWOに共感いただける支援企業さまが増えています。食に関わらずあらゆる業界とパートナーシップを結ぶにあたり、さまざまなコラボレーションメニューが増えました。

たとえば、社員の方が運動した時間や距離を寄付額に換算する、ウォーキングキャンペーン。自社商品が購入されるごとにTFTへ一定額を寄付いただく、パートナーシップの取り組み。 SNSまたは特設サイトに投稿されたおにぎりの写真1枚あたり、100円(給食5食分に相当)が協賛企業から寄付される「おにぎりアクション」など、多彩な取り組みが生まれています。

おにぎりアクションの1コマ 出典:TABLE FOR TWO
TFTの理念に共感してくださった企業のみなさんが、楽しみながら継続できるような取り組み・メニューを、ともに考えていけたら嬉しいです。
ありがとうございます。それでは最後に、村田さんのビジョンをお聞かせください。
支援先の子どもたちの成長を見守っていると、「どこに未来のリーダーが隠れているか分からないものだ」としみじみ思います。これからは、どの国の子どもたちも教育を受けられ、誰にも平等にチャンスが巡ってくるような世界になってほしいと思います。

そのためにも、子どもたちの力になりたい気持ちを持った企業さまと出会い、みなさんがアクションを起こすお手伝いをできましたら。TABLE FOR TWOがユニークなのは、肩ひじを張らなくても社会貢献に参加していただけること。まずは1食20円の寄付から始めて、世界で起きていることを知るきっかけにしていただけたら幸いです。
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