今回ご紹介するのは、静岡県浜松市の一般社団法人「funbank(ファンバンク)」の取り組み事例です。「楽しさ(fun)がこだまする社会を創ること」を理念に掲げ、2023年5月に設立した同法人。今回ご紹介するクラフトビールの開発をはじめ、音楽やスポーツイベントの開催、絵本の製作・出版など、身近な暮らしの中で「子どもも大人も楽しめる」事業を通して地域活性化を推進しています。
ファンバンク創設者の大城七瀬さんは、2021年から浜松市内で定期開催しているランニングイベント「ビアランハママツ」の発起人でもあります。大城さんがアメリカのボストンに在住していた当時、知人から誘われて参加したランニングイベントのアットホームな雰囲気に感銘を受けたことをきっかけに、帰国後、思いを共有する仲間を集めて浜松での開催にこぎ着けました。月1回ほど継続して開催する中で、「いつかこのイベントのオリジナルビールを作りたい」と思い描くようになった大城さん。醸造会社「オクタゴンビール」と、浜名湖畔の漁師町「舞阪地区」のカキ養殖業者らとコラボし、2024年9月にクラフトビール『ミネラルブリュー』の開発を実現させました。
コンセプトは「環境とアスリートにやさしいビール」。舞阪町養かき組合では年間200トンもの殻が排出され、その処理が問題となっていました。ビールの副原料として使うだけで全ての牡蠣殻を処理することは難しいですが、「殻を処分するための持続可能な事業を確立したいと考えてきた中で、その一歩目になった」と養殖・販売業者「八木田牡蠣商店」の八木田昇一さんは話します。ランニングイベントがきっかけで生まれたこのビールは、粉砕したカキ殻を副原料として使用することでカリウムやマグネシウムなどのミネラルを含み、運動で失われたミネラルを補給できるそうです。
ビール作りは、八木田牡蠣商店のカキ殻を水産物卸売店「カネ渥」が粉砕し、煮出した抽出液を発酵させることから始まります。この抽出液にはミネラルが多く含まれるため、一般的な国産ビールより硬い風味が特徴で、ドイツビールのヴァイツェンのように奥深く、すっきり爽やかに飲めるだけでなく芯の通った飲み応え。大麦ではなく小麦を使用することで、まろやかな口当たりも楽しめます。舞阪地区と浜松市街地をモチーフにしたラベルデザインは、地元イラストレーターの加納詩織さんが手がけました。
発売記念として、「ビアランハママツ」の派生イベント「ビアランピック」を開催し、「ミネラルブリュー」を一般にお披露目しました。アットホームな雰囲気の中、ランニング後に参加ランナー70人と来場者300人が一斉に乾杯し、会場を盛り上げました。
ミネラルブリューを片手に、大城さんは「浜松と浜名湖の魅力が詰まった特別なビールが出来上がった」と笑顔で語ってくれました。将来的には、牡蠣殻を肥料にした地元農作物と掛け合わせたフレーバービールの開発も計画しているそうです。ファンバンクの合言葉は「No fun, No life!」。地域課題と向き合いながら、これからも“楽しさあふれる事業”を展開してくれることに期待しています。
■商品情報
商品名 ミネラルブリュー
内 容 ビール(330ミリリットル入)
価 格 1本 900 円(消費税込)
販売場所 ファンバンク・浜松市内飲食店
目標11
住み続けられるまちづくりを
目標12
つくる責任つかう責任