目標1. 貧困をなくそう ターゲット5
前回までの記事では、経済的な貧困に対する内容が中心となっていました。
SDGsでは、経済的な支援だけでなく、自然災害に対する備えのない貧困層の人々に対して、自然災害に対しての強靭性も得られるように援助する必要があるとしています。
ターゲット5では自然災害による貧層への影響に注視し、災害に対する脆弱性を軽減することを目標としています。
一般的に、天候や地震といった自然災害は国や地域を選ばず発生します。しかし1980年から2017年までに起こった死者数が多い自然災害は開発途上国を中心に発生しているのです。
自然災害は、地域社会の貧困をより進めてしまう原因となります。世界銀行の報告によると異常現象は年間で5,200億ドルの経済損失を生み出し、毎年2,600万人が貧困に陥る状況を作り出しているとしています。
例えば、2010年にバングラディシュで発生したサイクロンの影響で、失業率が49%、貧困率が22%上昇しました。また、2005年にグアテマラを襲ったハリケーンでは、全児童の7.3%にあたる子どもが学校を退学し、仕事を手伝うといった結果をもたらしています。
開発途上国で被災者が多い原因として、国や地域そのものが防災に対して十分な対策を講じられていないことも原因のひとつであると考えられます。
防災に万全でない途上国の特徴は以下の通りです。
・政府に災害対策機関がない
多くの開発途上国では中央政府や地方自治体に防災関連の部局がありません。こういった国や地域で災害が発生した場合、事後対策を行うことが一般的であり、防災関連の法整備が不完全であるケースが少なくありません。
・防災への投資が少ない
開発途上国の多くは、インフラ整備などの開発が優先されるため、防災対策を開発計画に組み込んでおらず、災害対策予算が限られています。そのため、被災後に多額の復興費用が必要になる可能性が高く、負のスパイラルに陥りやすいのです。
・災害・防災情報へのアクセスがない
台風や洪水は、地震と違って進路や到達時間をある程度予測できます。予測データを把握できれば事前に避難して被害を最上限に抑制することが可能です。
しかし、貧困層の多くはラジオやテレビといった情報伝達手段を持っておらず、情報の周知が難しい状況です。また、政府がハザードマップや地震危険度マップなどを作成しても、広報活動が不十分なために、住民に普及せず災害リスクを正しく理解されていないケースが多いのです。
2030年までの国際的な防災の取り組み指針となっているのが、2015年に宮城県仙台市で開催された「第3回国連防災世界会議」の成果文書である「仙台防災枠組2015-2030」です。
仙台防災枠組では、災害による死亡者の減少といった項目に対し、地球規模での目標を初めて設定しました。
また、防災の主流化や防災投資、復興過程における「より良い復興(Build Back Better)」などの、防災に関する新しい考え方を提示し、革新的な取り組みが評価されています。
達成指標にも「仙台防災枠組に沿った国家レベルの防災戦力を採択し実行している国の数」を採用しています。
仙台防災枠組を通した活動により、国際的な防災戦略の浸透が期待されます。
次回の記事では、これまでのターゲット1~5の課題を達成させるための手段や策として定められているターゲットaについて解説していきます。